代表インタビュー

「AIとデータ・サイエンスで海上輸送の未来を切り拓く」
seawise株式会社 代表取締役 筒井 一彰 氏
seawise設立の経緯についてお聞かせください。

現在の海事産業は、環境規制の強化や人手不足など将来の不確実性が高く、既存の運行業務を根本から変革することが求められています。
 この変革を実現するには、まず船舶・運航に関するデータを集め、業界全体で活用できる基盤=データプラットフォームを築くことが不可欠です。こうした課題認識を持つ複数の企業のジョイント・ベンチャーとして、seawiseは2022年11月に設立されました。

seawiseは、この基盤を運営する専業事業者として、集積したデータの価値を業界に還元し、将来的には自律運航など、これまで想像できなかった新しい形の運航を実現していくことを目指しています。

海事産業が直面する課題とは?

海事産業における最大の課題のひとつは、環境規制への対応です。複雑かつ多層化される規制に対応していくには既存の運用はいつか限界がくるのではないか、したがって、抜本的な業務変革が不可欠となります。数十年後には、従来の経験や勘に頼った運航オペレーションから脱却し、データに基づく意思決定が主流になると予測されています。

加えて、船舶の状態を正確に把握し、継続的に管理する仕組みも求められています。私たちはこれを「船舶カルテ」と呼び、船舶全体から取得される運航データや、船体・機関・搭載機器に関する情報を一元的に蓄積・活用することで、新しい価値を生み出せると考えています。

その考え方は、人間の健康診断や日常的な健康管理に近いものです。日々の運航モニタリングに加え、定期的な状態のスナップショットを残すことで、船舶のライフサイクル全体にわたる健全性と価値を高めていくことが可能になります。

さらに、修繕やメンテナンスにおける情報管理のデジタル化も急務です。現在一般に修繕関連データはExcelやPDFに散在しがちですが、今後は標準化されたプラットフォームで一元管理することで、効率性と透明性の大幅な向上が期待されます。

気候変動への対策も求められています。

海事産業全体が目指すカーボンニュートラルやネットゼロという大きな目標に対し、当社もIMOが発する国際基準でのGHG(温室効果ガス)規制への貢献を喫緊の課題と捉えています。目の前の規制を遵守することはもちろん重要ですが、それは最終ゴールではなく、海事産業全体のGHG排出量のさらなる削減を目指しています。

特にEU(欧州連合)主導のFuelEU Maritimeなど、運航コストに大きな影響を与える規制の導入は、船主にとって無視できません。環境意識が高まる中で、どのようにして規制を遵守し、さらにGHG排出量を削減していくかという点が大きな課題です。

seawise株式会社 CEO 筒井一彰
「未来の船舶」についてどのような姿を描いていますか。

seawiseが描く「未来の船舶」は、統合されたデータ基盤から情報を取捨選択し、多様なニーズに応じた最適な運航を自律的に実現する船です。

例えば次世代型の風力推進船では、風の強さや向きに応じて帆の角度や高さを調整することで運航効率は向上しますが、さらにエンジン出力や航路設定といった膨大なパラメーターを取り込み、総合的に判断することで、人間の感覚を超えた精度で最適化を行うことが可能になります。

もちろん船は積み荷や船種によって適した航路が異なりますが、その前提のうえでデータの収集と可視化を進めることで、より高いレベルでの運航最適化が可能になります。最終的には、自律運航へとつながり、単に環境規制に対応するだけでなく、船体価値や経済性を高め、持続可能な海運物流の実現に貢献できると考えています。

未来に向けてseawiseはどのような取り組みに注力していきますか。

seawiseは、海事データを活用するプラットフォームとして、ユーザーと開発者の両方が集まる「エコシステム」の構築に注力しています。

そのための取り組みは大きく二つあります。ひとつは、顧客に寄り添ったサービスを充実させ、利用者(ユーザー)を増やすこと。もうひとつは、魅力的なユーザー層が集まることで、そのニーズに応える開発者(ディベロッパー)が参画し、アプリや機能を提供してくれる流れをつくることです。

現在はプラットフォームの基盤を整える段階にあり、その「呼び水」として自社開発のアプリを提供しています。将来的には、蓄積したユーザー基盤をもとに「こうしたニーズを持つユーザーがいます。我々のデータを使って新しいサービスを開発しませんか?」と開発者に働きかけ、海事産業全体に広がるプラットフォームへと成長させていきます。

未来を切り拓く、航海が始まっています。

seawiseは、海事産業の「これまで」と「これから」をつなぐ架け橋となるべく、テクノロジーと現場の知見を融合した革新を追求しています。
単なるシステム開発会社ではなく、業界の価値循環を生み出すプラットフォームの担い手として、そして次の世代へ海をつなぐ未来志向のパートナーとして──

私たちはこれからも、現場に寄り添いながら、新しい航路を共に描いていきます。

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